メーカーに損害賠償したい!

メーカーから仕入れた家庭用電気機器をお客様に販売したところ、機器に不具合があり、メーカー対応による交換となりました。この場合の損害賠償として、どの範囲まで認められるでしょうか。

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  1. リーガルチェック より:

    そもそも、メーカーは不法行為体系の中に、過失責任とは別に製造物責任を負います。
    その根拠となるものとして、①危険責任、②報償責任、③信頼責任というものがあります。
    ①危険責任とは、メーカーは消費者に比較して安全性に欠けた製品のもつ危険性に関する情報を入手しやすく、また、その欠陥の発生を一般的にコントロールしやすい立場にあり、製品の安全性の欠如が現実のものとなって消費者に被害が発生した場合には、欠陥を作出し、制御しやすい立場にあるメーカーが損害賠償の責任を負担するのが適切であるという考え。
    ②報償責任とは、メーカーは製品の製造・販売により利益をあげており、そのように利益を生む事業活動が原因となって他人に損害を与えた場合には、その事業者として、常々彼等が得ている利益の中から、それを賠償させるのが社会的公平に適うという考え。
    ③メーカーは、一般的に自己の製品の品質について積極的な宣伝活動を行なっており、現代社会では、通常このような製品の一定の品質を信頼して初めて、安心して社会生活を営むことができることから、このような信頼に反して安全性に欠く製品を市場に出したことにより消費者に被害が生じた場合には、その責任をメーカーに負担させるのが適切であるという考え。
    このような考え方から、製造物責任法(PL法)では、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合におけるメーカーの損害賠償責任について定めています。
    同法3条では、製造物責任に関する根拠規定を明記しており、故意または過失を責任要件とする不法行為(民法709条)の特則として、欠陥を責任要件とする損害賠償責任を規定したものとなります。メーカーが責任を追うこととされる具体的な要件としては
    ・メーカーが製造物を自ら引き渡したこと
    ・欠陥の存在
    ・他人の生命、身体または財産の侵害
    ・損害の発生
    ・欠陥と損害との間の因果関係
    であり、これらが満たされる場合、メーカーは損害賠償責任を負うことになります。

    損害では、民法では「金銭をもってその額を定める」のが原則とされており(民法417条、722条)、同法もこれに従っています。損害賠償の範囲及び損害額の算定方法については、一般不法行為の場合と同一となります。

    不法行為による損害賠償の範囲については、判例は、債務不履行による損害賠償に関する民法416条の規定を類推適用するという考え方が採用されています。
    民法416条の規定の考え方の基本は、個々の事例ごとに、被害者の被った損害が通常損害(通常生ずべき損害)であるか特別損害(特別の事情によって生じた損害)であるかを検討し、通常損害に該当する場合には当然に賠償の範囲となり、特別損害に該当する場合には、その損害の発生について予見すべきであったかどうかを判断し、予見すべきであった時に損害を認めるというものになります。
    この損害には、精神的損害も含まれます。また、逸失利益(相手方の不法行為や違約がなかったら、当然失わなかったはずの利益・収入)については、相当因果関係の法理(当該債務不履行によって現実に生じた損害のうち、当該場合に特有な場合を除き、かような債務不履行があれば一般に生ずるであろうと認められる損害)によって判断され、合理的な範囲で認定されることになります。

    この他にも、企業等の事業者の損害、経済的損害、営業損害、信用毀損、無形損害、風評損害等の類型の損害が損害賠償の範囲に含まれるかなどの検討、判断基準の明確化は今後の課題と言われています(信用損害については肯定した判例もあり東京地裁平成13年2月28日判夕1068号181頁)。

    欠陥がある製造物の供給が「債務の本旨に従った履行をしない」ことに当たるときは、当該欠陥がある製造物を供給した者は、それにより被害者に生じた損害を賠償する責任を負います(債務不履行責任につき民法415条、契約不適合責任につき民法564条)。
    製造物の欠陥から生じた損害について債務不履行が認められる時には、同責任と製造物責任が並存することとなります。従って、被害者としては製造物責任に基づきメーカーに対し損害賠償を求めるか、債務不履行責任に基づき販売業者に対し損害賠償を求めることのいずれかを選択的に講師ができます。
    ただし、同法では、損害が欠陥ある製造物自体(製品の損傷、修理費用、使用不能による逸失利益)にとどまるときは、製造物責任の対象としないこととしているので、この場合、被害者は債務不履行責任(不法行為責任、瑕疵担保責任も考えられる)を追求することになります。

    ■解決力
    本件では、まずメーカーが製造物を自ら引き渡したこと、欠陥の存在、他人の生命、身体または財産の侵害、損害の発生、欠陥と損害との間の因果関係が認められるかが問題となります。
    こちらを満たしていると仮定した場合に、損害賠償の範囲ですが、家庭用電気機器自体の修理、交換費用は認められることとして、それ以外の企業等の事業者の損害、経済的損害、営業損害、信用毀損、無形損害、風評損害等の類型の損害が認められるかは、今回の機器の不具合によって、一般に生ずるであろうと認められる損害に該当するかどうかで判断されることになります。
    判例によっては、信用損害につき肯定された判例(前述)もありますので、詳しい事情を踏まえて検討してみてはいかがでしょうか。

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